第9章 【第八話】記録者の選択
食堂へ辿り着き、トレイを持って席へ着く。
隣には、リナリーが座っていた。
彼女は私の顔を見るなり、心配そうに眉を寄せる。
「ティファ、顔色が悪いわ」
温かなハーブティーのカップが、そっと私の前へ置かれた。
「……ラビと、何かあったの?」
柔らかな問い掛けが、胸へ沁みる。
けれど。
昨夜、書庫で聞いてしまったことを、彼女へ話すことはできなかった。
ブックマンの言葉も。
ラビが何も言い返せず、拳を握り締めていたことも。
雪原で、私を傷つかせたくないと口走った声も。
あの日。
私が、
――嫌いじゃないわ。
と告げた時の、あの掠れた声も。
どれも、声にしてしまえば、何かが本当に壊れてしまいそうだった。