第11章 【第十話】巻き戻らない時間
「アレンもだ、阿呆!!」
「うわぁっ!?」
二発目が、アレンの頭へ落ちた。
二人揃って、その場へ沈み込む。
私は思わず目を丸くした。
ブックマンは潰れた髪を乱暴に直しながら、床へ蹲る二人を睨み付ける。
「突っ込むなら周囲を見んか! 年寄りを轢き潰す気か!」
「だ、だって止まんなかったんさ……!」
「ラビが無茶するからです!」
「はぁ!? オレだけのせいにすんなよ!」
「八割くらいはそうでしょう!」
「同罪だ馬鹿者!!」
再び、拳骨が落ちた。
ごっ、ごんっ、と鈍い音が続き、ラビとアレンが同時に呻く。
その光景に、私はとうとう堪えきれなくなった。
「ふ、っ……あはは……!」
あまりにも場違いで、あまりにも可笑しくて、笑い声が零れる。
肩を震わせる私を、ラビが額を押さえたまま見上げた。
「ティファ……今、笑ったな……」
「ご、ごめんなさい……っ」
謝っているのに、笑いは止まらない。
隣では、アレンも痛そうに頭を押さえながら、困ったように口元を緩めていた。
少し離れた場所で、リナリーも兄の無事を確かめるようにコムイさんを見てから、ほっとしたように小さく笑った。
張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ解けていく。
笑い声が落ち着きかけた頃、ふと視線を感じた。
ラビが、床へ座り込んだまま、黙って私を見ていた。
目が合うと、彼はいつもの調子で肩を竦め、視線を逸らす。
掴まれていた腕には、あの指の強さが、まだ残っていた。