第11章 【第十話】巻き戻らない時間
「え……」
突然こちらへ振られ、私は返事に詰まる。
ラビの指が、僅かに強張った。
至近距離で目が合う。翠の瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた。
手が離れるより先に、アレンの声が落ちる。
「困っているじゃないですか」
「アレンだって、さっきまでティファの手ぇ握ってたろ」
「僕は、久しぶりに再会できたから……!」
「オレだって助けただけさ」
「助けた後まで抱え込む必要はありませんよね」
「細けぇなぁ」
二人とも、一応は笑っている。
病室の空気だけが、妙にぴりついていた。
私は慌てて口を開く。
「え、えっと……二人とも。今はまだ、周囲の確認を――」
――ミシッ。
足元から、嫌な音がした。
ラビが眉を寄せる。
「……ん?」
瓦礫の下から、押し殺された声が響いた。
「……お前達」
空気が凍る。
「いつまで、わしを下敷きにしておる」
ラビとアレンの顔が、同時に固まった。
恐る恐る視線を下へ向けると、巨大な鉄槌と崩れた瓦礫の隙間から、潰れたブックマンが、ぎろりとこちらを睨み上げていた。
「……」
「……」
「……あ」
暴走した鉄槌は、AKUMAだけではなく、戦っていたブックマンまで、見事にまとめて吹き飛ばしてしまったらしい。
しかも、かなり綺麗に下敷きにして。
ラビの顔が引き攣る。
「じ、じじい……生きてたんだな」
「ラァァァァビィィィ!!」
「いっでぇ!?」
瓦礫を弾き飛ばして起き上がったブックマンの拳骨が、ラビの脳天へ炸裂した。
ごんっ、と良い音が響く。