第11章 【第十話】巻き戻らない時間
最後に巨大な槌が床へ激突し、凄まじい衝撃と共に、ようやく止まった。土煙と瓦礫が、一斉に舞い上がる。
「っ、げほ……!」
咳き込みながら、私はニルヴァーナの発動を解いた。両手の刃が光へほどけ、空いた腕で目元を庇う。
「ティファ!」
煙の向こうから、ラビの声がした。
がし、と腕を掴まれる。
強い力で身体を引かれ、気付けば私は、ラビの胸元へ引き寄せられていた。
「無事か!?」
顔を上げると、目の前に埃まみれのラビの顔があった。
軽口を叩く余裕もないのか、翠の瞳が険しく揺れている。
私の腕を掴む手も、呼吸も、微かに震えていた。
「……ええ。私は大丈夫。リナリーも、コムイさんも――」
答え終える前に、ラビが深く息を吐いた。
「……はぁ。マジで死ぬかと思ったさ」
「あ、あの……ラビ」
「ん?」
「近いわ……」
ラビの動きが、ぴたりと止まる。
「ティファ! 怪我はありませんか!?」
遅れて駆け寄ってきたアレンが、ラビの腕の中にいる私を見て固まった。
沈黙。
ラビの片眉が、ぴくりと上がる。
アレンの銀灰色の瞳が、私の腕を掴んだままのラビの手へ落ちた。
「……ラビ」
「なんさ」
「その手、離した方がいいんじゃないですか。ティファが困っています」