第11章 【第十話】巻き戻らない時間
石と硝子の破片が、白い病室へ雪崩れ込んだ。
耳を劈く破壊音と、舞い上がる粉塵。吹き込んだ冷気が、白いシーツを激しく翻す。
私は反射的に寝台へ身を投げ出し、眠るリナリーの身体を庇った。
「ティファちゃん!」
コムイさんの声に、すぐ身を起こす。廊下の奥からは、患者の避難を呼び掛ける職員たちの声が聞こえていた。
砕けた壁の向こう、朝霧の中に、複数の黒い影が浮かび上がっている。
無機質な球体の身体に、歪んだ顔。忌まわしい駆動音と共に、砲口がこちらへ向けられる。
「AKUMA……!」
喉の奥で、ニルヴァーナが一気に熱を帯びた。胸の内側から溢れ出した白銀の光が、両腕を伝い、指先へ集まっていく。
私は両手を開き、短い旋律を紡いだ。
「――イノセンス、発動」
光が鋭い刃の輪郭を結び、二振りの白銀のレイピアが、私の両手へ顕現した。
「コムイさん、リナリーの傍を離れないでください!」
私は寝台の前へ立ち、二本の刃を交差させる。
直後、AKUMAの砲口が火を噴いた。黒い弾丸が、粉塵を裂いて飛来する。
右の刃を振るう。甲高い音と共に、弾丸が銀の火花となって弾け飛んだ。
続けざまに迫る攻撃を、身体を捻りながら切り払う。黒い団服の裾が、砕けた床の上で大きく翻った。