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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第11章 【第十話】巻き戻らない時間



その横で、アレンの視線が寝台の上のリナリーへ吸い寄せられる。
 
顔色はまだ白く、左目を覆う包帯が痛々しい。
それでも彼は、支えようとしたコムイさんの手をそっと離れ、ゆっくりと寝台の傍へ歩み寄った。
 

「……リナリー」
 
掠れた声が、静かな病室へ落ちた。
 

眠り続けるリナリーの指先は、白いシーツの上で動かない。
 
アレンは、その傍らで立ち尽くした。手を伸ばしかけて、触れることさえ躊躇うように、指が途中で止まる。
 

その背中は、先ほど私の手へ縋った時よりも、ずっと小さく見えた。
 

「……僕が……」
 
途切れた声は、それ以上続かなかった。
何を言おうとしていたのかは、分かってしまった。
 

壁際に立っていたラビが、小さく息を吐いた。

 
「……なぁ、アレン」
 
アレンが、ゆっくりと顔を上げる。

 
「少し、散歩でも行かね?」
 
「……え?」
 
「このまま突っ立ってても、リナリーは起きやしねぇさ」
 
ラビは、いつもの軽い口調で続けた。
 
「ちょっと付き合えって。……顔色、死んでんぞ」
 
その声に、からかう響きはなかった。
 

アレンは、迷うようにリナリーへ視線を戻す。
 
「でも……」
 
「大丈夫よ、アレン」
 
私は、静かに声を掛けた。

 
「リナリーの傍には、私がいるわ」
 
アレンの銀灰色の瞳が、私へ向く。まだ迷いを残したまま、彼はほんの僅かに頷いた。
 
「……お願いします」
 
「ええ。任せて」
 

ラビが扉へ手を掛けた。
 
「じゃ、行くさ。ほんのちょっとだけな」
 
アレンはもう一度だけ眠るリナリーを振り返ってから、ラビの後へ続いた。

 
扉が、静かに閉じられる。二人の足音が、廊下の向こうへ遠ざかっていった。


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