第8章 【第七話】肩を並べる約束
黒の教団へ戻る頃には、空は淡い夕暮れに染まっていた。
石造りの門を潜った瞬間、張り詰めていた身体から少しだけ力が抜ける。
左腕の傷は深くない。
歩くことにも支障はなかった。
けれど、雪道を抜け、長い移動を終えた身体には確かな疲労が残っている。
気付けば、歩調が僅かに遅れていた。
「……ティファ」
すぐ隣から声が落ちる。
顔を上げると、ラビがこちらを見ていた。
「歩けるか?」
「ええ。少し疲れただけ」
困ったように笑いながら、ラビは足を緩めた。
それから、何でもないことのように傷のない方の腕を差し出す。
「ほら、掴まれ」
「……歩けるわよ?」
「知ってるって。歩けるのは知ってるさ」
ラビは、少しばつが悪そうに視線を逸らした。
「けど、まぁ……たまには、格好つけさせろよ」
私は一瞬だけ迷った。
それから、静かにその腕へ手を添える。
「……ありがとう、ラビ」
「ん」
短い返事。
私が腕へ手を添えたまま歩き出すと、ラビも何も言わず隣へ並んだ。
私は、彼の傷ついた肩へ視線を向ける。
「あなたこそ、医務室へ行かないと」
「へいへい。……ま、仲良く一緒に怒られに行こうぜ」
「私も怒られる前提なの?」
「傷こさえて帰ってきたモン同士、連帯責任さ」
「それ、あなたも含まれてるでしょう」
「……お、よく気づいたな」
ラビが小さく吹き出す。
門の奥から、慌ただしい足音が響いた。