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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌



「もう……無理……」
「休んだらもう一度だ」

「どうして……」

耐えきれず、問いかけた夜があった。


「どうして……私がこんなことしなきゃいけないの……」

師匠は焚き火の向こうで煙草を咥えたまま、暫く黙っていた。

炎が揺れ、その横顔を赤く照らす。


やがて、低い声が返ってくる。


「お前がセトラだからだ」
「セトラって、何なの」

師匠の瞳が、真っ直ぐこちらを見る。


「死に触れ、魂を導く血だ」


母の魂。
小さな鳥の光。

二つが、胸の中で重なる。


「じゃあ……もし、私が歌わなかったら」

師匠は暫く黙った。


「伯爵に利用されてた可能性はある」

胸の奥が冷たくなる。


「お母さんも……?」
「ああ」

炎が揺れた。

「だが、お前が先に送った」

低い声。

「だから、もう誰にも呼び戻せねぇ」


母の灰。
最後に光となって昇っていった魂。


もし、私が歌わなかったら。

母まで、あの異形の中で泣いていた少女のように、何かへ縛られていたのだろうか。


胸の奥が、静かに震えた。



私は、母を消してしまったのではなかった。

身体を救うことはできなかった。
それでも、母の魂だけは守れた。


「お母さん……」

涙が、一筋だけ頬を伝う。


師匠は慰めなかった。
ただ煙草の灰を落とし、立ち上がる。


「泣くのは勝手だが、明日も訓練はやるぞ」


私は涙を拭いながら、小さく頷いた。

怖さが消えたわけではない。
歌うたびに、母の最後を思い出す。


それでも。

この歌が母を守ったのなら。
この力で、誰かを同じ苦しみから解放できるのなら。

もう、ただ怯えているだけではいたくなかった。
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