第10章 【第九話】空白の再会
「……そっか」
ラビは、笑ったままそれだけ返した。
急に静かになった病室に戸惑いながら、私は立ち上がろうとした。
「アレン、何か飲めるものを――」
椅子から腰を浮かせた途端、視界の端が白く滲んだ。
足元が揺れる。喉の奥へ残っていた鈍い熱が、急に重さを増した。
「……っ」
「ティファ」
気付いた時には、ラビがすぐ隣まで来ていた。
伸びてきた手が、私の肩を支える。傾きかけた身体が、ごく自然に彼の方へ引き寄せられた。
「……ラビ」
「ほら、やっぱ無茶してんじゃん」
ラビは、いつも通り呆れたように笑っていた。
肩へ置かれた指先には、思った以上に力が入っていた。
「看病熱心なのはいいけど、お前が倒れたら意味ねぇだろ?」
「大丈夫。少し、立ち眩みがしただけ」
「立ち眩みは、大丈夫のうちに入んねぇよ」
ラビに促され、私は椅子へ座り直した。足元が落ち着いても、肩を支える手はすぐには離れなかった。
「……ティファ、顔が真っ青です」
アレンの視線が、私の顔から、肩を支えるラビの手へ移った。
そこへ、廊下から慌ただしい足音が近付いてきた。
「アレンくん、失礼するよ」
扉が開き、コムイさんが入ってきた。
夜を徹して移動してきたのだろう、眼鏡の奥には疲労が滲んでいる。
その表情に普段の茶目っ気はなく、手には医療器具の収められた小さなケースと、数枚の記録用紙が抱えられていた。