第10章 【第九話】空白の再会
静かな病室の外から、硬質な靴音が響いた。
コツ、コツ、と一定のリズムで近付いてきた足音が、病室の前で止まる。
扉が開かれた。
「……やっぱ、ここにいたか」
聞き慣れた声に、胸が小さく跳ねた。
振り返ると、扉の傍にラビが立っていた。
翠の瞳が、真っ直ぐこちらを見ている。口元には、軽い笑みが浮かんでいた。
「コムイから聞いてたけど、ほんとに任務帰りのまま来たんか」
ラビは肩を竦める。
「こんな朝っぱらから看病かよ。……相変わらず、自分のことは後回しなんだな」
「ラビ……」
声を返しながら、私は無意識に握られた手へ視線を落とした。アレンの指は、まだ私の手を離していない。
ラビの視線も、そこへ落ちた。
繋がれた手から、手首の銀色のボタンへ。それから、何事もなかったように私の顔へ戻ってくる。
「……他人の心配してる場合かっつうの」
ラビは軽く笑った。
以前なら、その言葉と一緒に、彼はもう私の傍まで来ていたはずだった。
彼は、扉の傍から動かなかった。
寝台の上で、アレンが僅かに眉を寄せた。まだ青白い顔のまま、私の手を握る指へ、ほんの少しだけ力を込める。