第8章 【第七話】肩を並べる約束
「君は君で、無茶をしそうだからね」
「分かってるさ」
ラビは軽く答えた。
けれど、その声だけが、思ったよりも真面目だった。
そして。
「ちゃんと連れて帰る」
何気ないように落ちた、その一言。
胸の奥が、僅かに揺れた。
私は思わずラビを見る。
彼はもう、いつものように笑っていた。
けれど、私の視線を受けた瞬間。
口元の笑みが、ほんの僅かに揺れる。
まるで、自分でも今の言葉を誤魔化しきれなかったみたいに。
「……私も、あなたとちゃんと帰るわ」
気付けば、そう答えていた。
ラビの瞳が、僅かに見開かれる。
それから、少しだけ柔らかく細められた。
「……ああ」
短い声。
「そうしてくれ」
いつもの軽口は、そこにはなかった。
私はそれ以上何も言わず、ただ小さく頷いた。
室長室の窓の外では、灰色の空から細かな雪が降り始めていた。
向かう先に待つ、白い山村を予告するように。
静かに。
途切れることなく。
*
任務へ向かう汽車の窓の外では、景色が少しずつ白へ変わっていった。
遠くに見えていた木々の枝へ雪が積もり、やがて地面も空も、境目が分からなくなるほど淡く霞んでいく。
コンパートメントの中には、車輪が刻む一定の音だけが響いていた。
向かいの席には、現地のファインダーであるミヒャエルから届けられた資料が置かれている。
私は窓際へ座り、流れていく雪景色を見つめていた。
「なぁ、ティファ」
「何?」
「……今度は、無理になる前に言えよ」
私は僅かに目を瞬いた。
「喉のこと?」
「それも。身体のことも」