第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
「……ほら、もう書き終わったなら戻るぞ」
「まだ少しだけ――」
「駄目さ。今日は休むって言っただろ」
「覚えていたのね」
「そりゃ覚えてるさ。あんな顔で頷かれたらな」
返された声は、少しだけぶっきらぼうだった。
私は手帳を胸元へ抱え、小さく息を吐く。
「……分かったわ」
そして手帳を胸元へ抱え、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
ラビも何も言わず、隣へ並ぶ。
書庫を出る直前。
ふと、横から視線を感じた。
顔を向けると、ラビがこちらを見ていた。
けれど目が合った瞬間、何事もなかったように笑う。
「ほら、行くさ」
その声に促され、私は彼と並んで書庫をあとにした。
背後では、古い時計の振り子だけが。
変わらない音で、静かに時を刻み続けていた。