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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌


私は瞬きをする。

「今、つけたの?」
「悪いか」

あまりにも当然のように返され、言葉に詰まる。


「どういう意味……?」

師匠は煙草の灰を落とした。


「苦しみからの解放」

低い声。

「魂を縛る器を壊す力なら、悪くねぇだろ」


胸の奥が、僅かに震えた。


異形の中で泣いていた少女。

最後に聞こえた。


――ありがとう。


「ニルヴァーナ……」

確かめるように、その名を口にする。

すると、喉の奥がほんの僅かに熱を持った気がした。


まるで、そこに宿る何かが、初めて呼ばれた自分の名を聞いたみたいに。


師匠の瞳が僅かに細められる。

「覚えとけ」

低い声。

「お前は魂へ届く」

そして。

「ニルヴァーナは、AKUMAを壊す」


その言葉が、胸へ落ちた。


「じゃあ、あの日は……」
「ああ。二つが同時に出た」


母へ向かった淡い光。
異形へ向かった鋭い白銀の力。

あれは、同じものではなかった。


「歌だけじゃ……あの子を助けられなかったの……?」

「無理だ」

即答だった。

「AKUMAの魂は、器へ縛られてる」


師匠は私の喉元を見た。

「だから、そいつを壊す」

私は無意識にそこへ触れる。

「ニルヴァーナで……?」
「ああ」

胸が、強く揺れた。


師匠は煙草を捨て、靴底で火を消す。

「明日から鍛える」
「え……?」

「歌も、そいつも。身体も、心もだ」

足が震えた。


「私に、できるの……?」

師匠は背を向ける。


「できるかじゃねぇ」

振り返らないまま、吐き捨てる。

「生きたきゃ、やれ」


その日から、私の日々は変わった。
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