第2章 【第一話】雪に残る歌
「どうした」
少し先を歩いていた師匠が、面倒そうに振り返る。
「鳥が」
「死んでるな」
師匠はそれだけ言って、また歩き出す。
私は小さな亡骸から目を離せなかった。指先に、何かがかすかに触れた。
小さくて頼りない、行き先をなくした光のようなものだった。
「っ……」
私は息を呑んだ。
喉の奥がほんのり温かくなる。冷たくなった小さな身体が、ひどく寂しく見えた。
気付けば、あの日と同じ柔らかな旋律を歌っていた。
亡骸から小さな光が浮かび上がる。光は一度だけ私の指先の周りを舞って、夕暮れの空へ消えていった。
先を歩いていた師匠が足を止め、ゆっくりこちらへ戻ってきた。鋭い瞳が、私と鳥の亡骸を見比べた。
「……やっぱりか」
「え?」
師匠は鳥の亡骸を見下ろした。
「今のが、セトラの力だ」
私は思わず喉元へ触れた。
「これが?」
「全部じゃねぇだろうがな」
師匠は煙草を取り出し、火を灯した。薄い煙が冷たい空気へ流れていく。
「死んだものへ触れて、行く先を示す。それはお前の血に残ってる力だ」
私は鳥の亡骸を見る。
「じゃあ、お母さんも」
「お前が送った」
師匠は煙を吐き、それから私の喉元へ視線を向ける。
「だが、AKUMAを壊したのは別だ」
「別?」
「ああ。お前の中には、寄生型のイノセンスもある」
「イノセンス」
自分の中にあるというそれが、何なのか分からなかった。
「簡単に言えば、AKUMAを壊すための力だ」