第8章 【第七話】肩を並べる約束
深くはない。
……私を庇わなければ、負わずに済んだ傷だ。
「ごめんなさい」
思わず零した声に、ラビの表情が変わった。
「それ禁止」
「でも」
「でもじゃねぇって」
彼は軽く息を吐くと、傷のない方の手で、私の左腕を指差した。
先ほど、AKUMAの装甲が掠めた場所。裂けた団服の袖の下では、細い傷から赤が滲んでいる。
「……ここ、お前だって掠ってんじゃん。それ、オレのせいにされたら、こっちは何回謝りゃいいんさ」
「……」
「だろ?」
ラビは、ふっと笑った。
「おあいこさ。……つーか、そーゆうことにしとけって」
肩を竦める。
「隣で戦うって決めたんだろ。なら、傷の勘定なんざすんな」
私は左腕の傷へ一度視線を落とし、頷いた。
「……ええ」
南側の家々を一軒ずつ確かめていくと、崩れかけた家の奥で、身を寄せ合う老夫婦と幼い子供が見つかった。
ラビが瓦礫をどけ、私は泣きじゃくる子供を抱き上げる。
教会の扉を開けると、ミヒャエルと村人たちが一斉にこちらを振り返った。
奥から、子供の名を呼ぶ母親の声が飛んでくる。アンナの村には、もう残らなかった音だった。
――今度は、守れた。
喉の奥が、僅かに震えた。
「間に合ったのね」
呟くと、隣でラビが私を見た。
「……ティファ」
「嬉しいの。今度は……間に合ったから」
ラビは何も言わず、少しだけ目を細めた。
その翠の瞳に、僅かな安堵が滲んでいた。