第8章 【第七話】肩を並べる約束
ラビの背中を見たまま、私は唇を噛んだ。
……さっきから、ずっとそうだ。
私が踏み込むたび、先にラビが前へ出る。
守ろうとしてくれているのは、分かっている。
でも、それが悔しかった。
「……いい加減にして」
私の声に、彼の背中が僅かに止まる。
「これは任務よ。私を信用していないの!?」
「そうじゃねぇさ。……でも、今は駄目だ。下がれ」
「……何が違うの? 私は、そんなに頼りない?」
ラビは、ようやく少しだけ顔を向けた。
「……ティファが無茶すんのも、自分が傷つくのを何とも思わねぇのも、オレは知ってる」
雪が、二人の間を激しく吹き抜ける。
「だから、今回はオレが止める。……お前が傷つくとこなんか、見たくねぇんだよ」
言ってから、ラビ自身が僅かに目を見開いた。
彼は、退かなかった。傷ついた肩で、私の前に立ち続けている。
その目には、いつもの乾いた静けさも、軽口で距離を測る余裕もなかった。焦ったような熱だけが、そこにあった。
私は息を吐き、首を横へ振った。
「……私だって、見たくないわ」
ラビの肩口から、赤い血が雪の上へ落ちる。
「あなたが傷つくのをただ見ているだけなんて、嫌よ」
「ティファ……」
一歩踏み出して、彼と肩を並べる。二振りのレイピアを構え直す。
「隣で戦いたいの」
ラビが、言葉を失ったように私を見た。
私は左手のレイピアを右手へ持ち替え、空いた指先を、大槌の柄を握る彼の手へそっと重ねた。
冷たい手袋越しに、彼の指先が強張るのが分かった。