第8章 【第七話】肩を並べる約束
「今後の任務でも、君が力を使った際には、その経過を記録するように、と」
喉の奥が、微かに熱を持つ。
「……前回の件が、理由ですか」
「うん」
コムイさんは静かに頷いた。
「君の歌が、歪められた魂にまで届いたこと。中央庁は、そこに目を付けたみたいだ」
助けを求めるように軋んでいた、あの村の歌が蘇る。
「そのため、今回も君の能力行使について記録を取る必要がある。ラビに同行してもらう」
――記録のために。
私はラビを見た。
いつもの笑顔なのに、何を考えているのか分からなかった。
「……ずっと見られてるのは、落ち着かないわ」
「安心しろって。任務中ずっと、追い回すわけじゃねぇさ」
「じゃあ、汽車の席は別々ね」
「それは困るさ」
「どうして?」
「……記録係だから?」
いつもの軽口だった。
なのに、その笑顔の下にあるものが、以前より少しだけ近く見える。
――今は、任務だ。
私はそれ以上考えるのをやめた。
「ティファちゃん」
コムイさんが、改めて真剣な目で私を見た。
「今回は通常のAKUMA討伐とはいえ、初めての雪山任務だ。無理はしないこと。前回のように、自分の限界を越えてまで、一人で背負おうとしないこと」
胸が、微かに詰まった。
「……はい」
答えた声は、思ったよりも小さかった。
「ラビもだよ」
コムイさんが視線を移す。
「君は君で、無茶をしそうだからね」
「分かってるさ」
ラビは軽く答えた。
執務室の窓の外では、灰色の空から細かな雪が降り始めていた。