第8章 【第七話】肩を並べる約束
side:ティファ
アンナを連れ帰った任務から、十日ほどが過ぎていた。
喉を焼くようだった痛みは、もうほとんど残っていない。医務室でも、ニルヴァーナの発動に支障はないと判断された。
大きな出来事は、何もなかった。
ただ、気付けばラビが近くにいることが増えた。
「おはよう」と言っただけで、「まだ少し掠れてるな」と返ってくる。
食堂で、鍛錬場によく顔を出す若いファインダーと話していた時も、そうだった。
「ティファさん。この前教えてもらった足運び、少しできるようになったんです」
「良かったわ。今度、また見せてくれる?」
「はい!」
青年は嬉しそうに頷いてから、少しだけ声を落とした。
「……ラビさんって、やっぱり強いんですか?」
「前の任務でも、何度も助けられたわ」
「……そう、ですよね」
青年の口元が、きゅっと引き結ばれた。
「書庫でも、よく見かけるんです。難しそうな本ばかり読んでて」
「ええ。この前も、私が読めなかった古い文字を、すぐに読んでくれたわ」
「ティファさんも……そういう人の方が、いいですか?」
「……? 物知りな人と話すのは、確かに楽しいけど」
「……僕も、本、読もうかな」
青年が、小さく呟いた。
「それで、あの……」
青年は、手元のトレーを握り直した。