第8章 【第七話】肩を並べる約束
オレにとって、人間は記録の対象だった。
戦場で死ぬ者も、生き延びる者も。裏切る者も、誰かへ縋る者も。
そのどれもを、感情を混ぜずに記録に留めてきた。
ティファは違う。
記録から零れ落ちるものを、わざわざ拾う。
名前を失った村人たちが、確かにそこで生きていたことを。顔を失った肖像画を。アンナ自身が覚えていない、母親が娘へ伸ばした手を。
残すべきものだけ残して、あとは切り離す。
そうしなければ次へ進めないと、オレは言った。
――それでも、私は覚えていたいわ。
損得でも、役に立つからでもねぇ。
ただ、覚えていたいから覚える。
そんなことを、あんなに真っ直ぐ言う人間を、オレは初めて見た。