第8章 【第七話】肩を並べる約束
side:ラビ
記録することと、覚えていること。
その違いを問われたのは、あの夜の書庫だった。
――ラビだって、残してるじゃない。
古い時計の振り子の音の向こうで、ティファはそう言った。
責めるでも、探るでもなく。ただ、不思議そうな顔で。
オレは答えた。
記録は必要だから残す。覚えているのは、もっと面倒だ、と。
間違っちゃいねぇ。
いくつもの名前を名乗り、いくつもの役割を演じて、それぞれの人生を記録してきた。その全部を抱えていたら、とっくに潰れてる。
名前も、感情も、その都度置いてきた。
それがブックマンの後継ってやつだ。
誰の側にも立たないからこそ、見えるものがある。
零れ落ちていく歴史を、誰か一人くらいは残さなきゃならない。
その役目を、オレが引き受ける。
そこに意味があることを、疑ったことはなかった。
なのに、あの夜から。
妙な引っかかりが、消えねぇ。