第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
ブックマンの指が、焼け焦げた紋様の一部へ触れる。
その瞬間、喉の奥のニルヴァーナが僅かに震えた。
知っている。
正確には、私自身が知っているわけではない。
身体の奥深くに刻まれた何かが、その形へ反応している。
母の歌と似ている。
けれど、救いとは正反対の方角へ捻じ曲げられた音。
「……どうして」
思わず、喉元へ手を添えた。
ニルヴァーナが、もう一度小さく脈打つ。
「どうして、これに反応するの……?」
ブックマンの手が止まった。
ラビの翠の瞳が、すっと細くなる。
暫く、誰も何も言わなかった。
やがてブックマンは、焼けた線を見下ろしたまま口を開く。
「この痕跡は、魂を天へ送るためのものではない」
低く、重い声だった。
「死した魂を、現世へ留めようとした跡だ」
「現世へ……留める……」
「本来、死者の魂はこの世を去る。お主の歌もまた、それをあるべき場所へ導き、囚われたものを解き放つための力だ」
ブックマンの視線が、私の喉元へ向く。
「だが、これは逆だ」
ブックマンの声が、さらに沈む。
「送らず。解放せず。終わらせず。死者の魂を、魂のまま現世へ縫い留め続けようとしておる」
背筋に、冷たいものが走った。
「そんなことをしたら……」
「魂は耐えきれず崩れる」