第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「……」
「離すことと、見捨てることは同じじゃねぇさ」
翠の瞳が、眠る少女へ向けられる。
「帰る場所へ送ってやったんだろ。あんたの歌で」
胸の奥で、張り詰めていたものが僅かに緩んだ。
「……ありがとう」
声を絞り出す。
ラビは軽く肩を竦めた。
「別に。オレは見たまま言ってるだけさ」
軽い言い方だった。
けれど、その声は、いつもよりずっと静かだった。
その時。
「まだ終わってはおらん」
ブックマンの低い声が落ちた。
彼は広場の中央へ歩み寄り、先ほど黒い霧の核があった場所へ膝をついている。
石畳には、焼け焦げた細い線が幾重にも残されていた。
まるで、巨大な縫い跡。
死者の魂を、この場所へ縫い留めるために刻まれた、異様な紋様。
「これは……」
私はふらつく身体を押さえながら、ブックマンの傍へ近付いた。
「イノセンスではないのですか?」
「違う」
ブックマンは即座に答えた。
その声が、ひどく低い。
「AKUMAの痕跡でもない。」
「では、何が……」