第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
母から受け継いだ、魂を導くための歌。
それを歪め、死者を縛りつけるために使った者がいるかもしれない。
「……中央庁には、何と報告するのですか」
尋ねると、コムイさんの表情が僅かに曇った。
「現時点で分かっていることを、そのまま報告する。君の能力が、拘束された魂の解放と、生存者の救出に有効だったことも含めてね」
有効だった、という言葉が、耳に残る。
私の顔色に気付いたのか、コムイさんは苦い表情のまま続けた。
「ティファちゃん。中央庁が君の力へ関心を持つことは、避けられないと思う」
背筋へ、冷たいものが這った。
教団の一員として戦う覚悟はある。
私の歌で救える魂がいるなら、そのために力を使いたい。
――きっと、誰も放っておきません。
インドを発つ朝、アレンが言った言葉が、耳の奥で蘇った。
「……私は」
言葉が続かなかった。
コムイさんは、報告書を静かに閉じた。
「今、答えを出さなくていい」
穏やかな声だった。
「君は任務から戻ったばかりだ。まずは休むこと。アンナのことも、今後の調査のことも、君一人へ背負わせるつもりはないよ」
一人へ背負わせない。
そう言われても、送り出した魂たちの光も、アンナの空白の瞳も、もう私の中にある。誰かに渡せるものではなかった。
「……ありがとうございます」
どうにかそう答え、一礼して部屋を出た。