• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて



廊下へ出ると、窓の外には深い藍色の帳が降りていた。降り続く冷たい雨が、石畳を濡らし続けている。


アンナの声も、執務室で聞いた言葉も、まだ身体の奥に沈んだままだった。


足を止め、窓辺へ視線を向ける。

雨に濡れた中庭が、ランプの淡い灯りを滲ませている。


「……随分ひでぇ顔してるさ」

不意に聞こえた声へ、顔を上げた。


少し離れた壁へ背を預け、ラビが立っている。

頬の傷には白い布が当てられ、裂けていた団服の肩口も簡単に繕われていた。

いつもより僅かに動きが鈍い。

痛まないはずがない。


「……傷は、大丈夫なの?」

思わず尋ねると、ラビは片手をひらひらと振った。

「これくらいなら平気さ。それより」

ラビの目が、静かに私を捉える。

「アンナのところ、行ってきたんか?」


私は小さく頷いた。

「……ええ」

「どうだった?」


尋ねられ、すぐには答えられなかった。

雨音が、二人の間へ落ちていく。



「……私のことを、覚えていなかった」

ラビの顔から、笑みが消えた。


「村で目を覚ました時には、母親がいたことだけは覚えていたの。顔も、声も分からないと言っていたけれど……それでも、お母さんと呼んでいた」

唇が震える。


「でも今日は……“おかあさんって、だれ”って聞かれた」

/ 368ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp