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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第51章 【第四十六話】かたちにならないもの



ラビの顔から、表情が抜けた。

その顔を、私は知っている。
出会った頃、この人がよくしていた顔だ。


こちらを見ているのに、誰も見ていない顔。



ラビの口が動きかけて、止まる。



……ラビになら、渡せると思ってた。

悲しかったことも、嬉しかったことも、意味の分からないままの言葉も、全部そのまま。


私はただ、この人に聞いてほしかっただけだ。



ラビは一度だけ目を伏せた。

「……悪ぃ」

その声に、ほんの少しだけ期待した。




「けど、最後に元帥が何て言ったかだけ教えてくれ」

――期待は、そこで途切れた。




「……もう、今は話したくない」

「何でさ」

「だって……」

何と言えばいいのか分からない。



ラビが自分の椅子へ腰を下ろす。

「なあ、ティファ。元帥が中央庁へ呼ばれる直前に、お前に何を話したのかは残しとかねぇと駄目なんさ」


「……」

「聖女に関わることなら、なおさら――」

――聖女。

その言葉が、部屋の中へ落ちた。


中央庁の人間が使う言葉。
母をそう呼んだかもしれない言葉。

ラビも言ってから気づいたらしい。

口が僅かに開いたまま、止まる。



分かっている。
この人が記録者だということを。

それを知った上で、私は好きになった。


だから今まで、一度も嫌だと思ったことはなかった。




でも、今日だけは嫌だった。



一番に話したい人が、目の前にいるのに。


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