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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第51章 【第四十六話】かたちにならないもの




「……じゃあ、黙って見てろって言うの」

「そうは言ってねぇだろ」


「……言ってるのと同じよ」
「そうじゃなくて――」


「私はエクソシストなのよ!」


最後の音が、ひどく割れた。
喉の奥に鋭い痛みが走る。



ラビの顔色が変わった。


割れた声と一緒に、目の縁から何かが零れた。


――違う。こんなの、泣くところじゃない。

拭いかけた手を、途中で下ろした。



ラビは何も言わなかった。

私も、しばらく何も言えなかった。



呼吸だけが、二人分聞こえていた。



「……今日」

濡れた声のまま、続けた。

「ニルヴァーナ……出なかったの」

ラビの顔が強張った。


「……え?」

「光は出たの……。でも、何回やっても形にならなくて」

「……」


手を握りしめる。

今朝、何も残らなかった手の感触が蘇った。



「怖くて……」

やっと言えた。

言ってしまうと、もう誤魔化せなくなった。
視界が一気に崩れて、あとはもう、拭う気にもなれなかった。


滲んだ視界の端で、ラビの手が浮きかけて、止まった。

伸ばされることは、なかった。



「それを……」

喉が震えた。

「最初に……ラビに、聞いてほしくて」

息を吸う。


「来た、のに……」



宙に止まっていたラビの手が、ゆっくり下がった。




私は扉へ歩き出した。


「ティファ」

呼ぶ声を背中で聞いたまま、扉を開けて、閉めた。


振り返らなかった。



向こうで、何かが床へ落ちる音がした。



病室には戻りたくなかった。

行く場所もないまま、ただ歩いた。



昼間より、廊下は広く感じた。


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