第51章 【第四十六話】かたちにならないもの
「……」
椅子から立ち上がった。
「おい、待てって」
「戻る」
「まだ話の途中――」
「もう話すことなんてない」
扉へ向かった。
「ティファ」
腕を掴まれた。
振り返る。
「元帥が何を知ってたか残しとけば、中央庁が動いた時に追える」
ラビの指に少し力が入った。
「お前を守るためにも必要なんさ」
胸の奥で、何かがぷつんと切れた。
「そんなかたちで守ってもらいたくなんかない!」
掴まれた腕を、振り払った。
ラビが目を見開く。
「私には……なんでも話せって言うくせに」
声を張った途端、喉の奥がひりついた。
それでも止められなかった。
「あなたは、何も話さないじゃない……!」
「ティファ、声――」
「この前も、その前も……っ」
「おい、無理すんなって」
「まだ早いとか……明日もあるとか、焦るな、とか……っ」
息が荒くなった。
「どうして私を止めるのか……肝心なことは、何も言わない!」
「……だから、まだ早いって」
その言葉に、胸の奥が強く揺れた。
また。
また、その言葉だ。
「前までの貴方なら、そんな風に止めなかった」
「……」
「どうして駄目なのか、ちゃんと言ってくれた。今みたいに、ただ『まだ早い』って言うだけじゃなかった」
「……っはっきり言ってよ!」
「――お前が」
声が、大きくなった。
「お前が、無茶ばっかするからだろ!」
「……」
「傷開いたまま出てくし、怪我治ってねぇのにレベル4の前に立つし、声潰れるまで歌うし!」
「……それは」
「そういうの、いい加減にしろっつってんだよ!」
部屋が、静かになった。
今日、何度呼んでも、力が形にならなかったことを、この人は知らない。
それを話しに来たことさえ、まだ知らない。