第51章 【第四十六話】かたちにならないもの
「……なんだか」
私は小さく笑った。
「貴方と、少し似ているわね」
紙の端に触れていたラビの指が止まった。
「……オレと?」
口元に残っていた笑みが、ほんの一瞬だけ消える。
「うん」
少し間があった。
「……どこがさ」
「上手く言えないけど」
父の話を聞いた時、なぜかラビの顔が浮かんだ。
それだけだった。
ラビは少しの間、何も言わなかった。
やがて、その視線が机の上へ落ちる。
「……元帥、その話、自分からしたん?」
「え?」
「親父さんのこと」
「……ええ」
「何かきっかけがあったん?」
少しだけ戸惑った。
「本部の話をしてたの。それから、私がもう歩けるのかって。その後で」
「ふーん」
何気ない声だった。
ラビの指が紙束の端へ触れる。
「――他には?」
「……え」
「他に、何か言われなかったか? 重要そうなこと」
私は答えなかった。
ラビは顔を上げる。
その目は確かに私へ向いている。
でも、私ではなく、答えだけを待っているように見えた。
指先が、冷えていく。
この人は、聞いている。一言も漏らさず、正確に。
その目が見ているのは、私が話した言葉だけだった。
「……ラビ」
「ん?」
「さっきから、私を見てないでしょう」
ラビの動きが、止まった。
「今のあなたは、ラビ?」
「……何さ、それ」
「それとも、ブックマンJr.として聞いてるの」
ラビの眉が寄る。
「どっちもオレだろ? お前が言ったんじゃねぇか」
「……分かってるわよ、そんなこと」
声が揺れた。構わなかった。
「でも、私は」
一度、息を吸った。
「四十九番目じゃなくて、『あなた』と話がしたいのよ」