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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第51章 【第四十六話】かたちにならないもの




扉を開けると、紙の匂いがした。


「あれ」

机の向こうで、ラビが顔を上げる。

少し驚いた顔をした。


「どしたん、こんなとこまで。体調、大丈夫なん?」

「……うん」


机の上には紙束が積まれていた。


一番上の頁には、『クロス元帥』の文字。


「座れば? あ、空いてる椅子これしかねぇや。ちょい待ってて」

ラビは立ち上がると、部屋の隅から椅子を引っ張ってきた。


いつも通りだった。
その姿を見て、肩の力が少し抜ける。



話せる――。

そう思った。


「あの……ね」

「ん?」

「今日、イノセンスを見てもらったの」

「おう」


「それで、その……」

喉の奥で言葉が詰まった。


応えなかったわけではない。
光は出た。ただ、形にならなかった。

失われてはいないと言われても、まだざわつきが消えない。


怖かった。

それが、ようやく喉元まで上がってきて――。

「――ああ、そういや」

ラビが口を開いた。


椅子の背に掛けた私の手が、止まる。

「昨日、クロス元帥と会ったんだろ?」


「……え?」

「行動記録に名前あったからさ。ちゃんと話せたん?」


「……うん」

「そっか」

私は、遅れて椅子へ腰を下ろした。


それでも、妙に落ち着かなかった。


師匠には中央庁の監視が付いていた。
会ったことそのものが記録に残っているのは、不思議ではない。


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