第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
その言葉が、鋭く刺さった。
……母を失った時の自分。
もし、あの時。
失った大切な人をこの世界へ留められる方法があると囁かれていたら。
自分は、本当に迷わず拒めたのだろうか。
「……ティファ」
ラビの声に、はっとする。
彼はいつの間にか私のすぐ近くへ立っていた。
巻かれた布に、まだ血が滲んでいる。
その手が、わずかに震える私の腕へ触れる。
「考えるのは後だ。今は、あの子を安全な場所へ移す方が先さ」
「……ええ」
「……う……」
背後で、小さな呻き声がした。
少女が、ゆっくりと目を開ける。
私はすぐに傍へ膝をついた。
「大丈夫?」
少女の瞳は、怯えたように私を見た。
まだ焦点が定まりきらない目。細い指が、傍に置かれた布人形を探すように動く。
私は慌てて、それを小さな手へ戻した。
少女は布人形を胸へ強く抱き締める。
「……ここ……どこ……?」
胸が、締め付けられた。
「あなたのお名前は分かる?」
少女の唇が、何度か動きかけては止まった。
「……アンナ」
「アンナ」
名を呼ぶと、少女はわずかに目を伏せた。
「……お母さんのことは、覚えている?」
問いかけると、アンナの顔が歪んだ。
思い出そうとしている。
必死に。
「おかあ、さん……」
細い声が震える。
「いた……はず……なのに……」
アンナの指が、布人形を強く握る。
「顔が……分からない……。声も……名前も……」
大きな瞳から涙が溢れた。
「思い出せない……!」
私は反射的に、アンナの小さな身体を抱き寄せた。
「……だいじょ――」
そう言いかけて、言葉が止まる。