第50章 【第四十五話】『守る』というかたち
角を曲がったところで、向こうから見慣れた黒髪が歩いてくる。
「あ」
神田もこちらに気づいたらしく、僅かに目を細めた。
「……もう出歩いてんのか」
「今日から少しならいいって言われたの」
「そうか」
足を止める様子もなく、そのまま横を通り過ぎようとする。
「神田」
呼び止めると、数歩先で足が止まった。
「……何だ」
「この前、ありがとう」
神田の眉が寄る。
「何の話だ」
「レベル4の時。銀幕、支えてくれたでしょ」
少し間が空いた。
「あの時、一人だったら押し切られてたと思うから」
「……別に」
「ちゃんと、お礼言いたかったの」
神田は面倒そうに舌打ちした。
「そんなことで声使ってんじゃねぇ」
「……何よ、それ」
「戻ったばっかなんだろ」
思わず口を噤む。
神田はもう、こちらを見ていなかった。
「また潰して騒がれても迷惑なんだよ」
「誰が騒ぐのよ」
「赤毛」
即答だった。
思わず吹き出す。
「……それは否定できないわね」
神田は答えず、そのまま歩き出した。
すれ違いざま、一度だけ視線が私の喉元へ落ちる。
それだけだった。
私は少しだけ笑って、その背中を見送った。