第50章 【第四十五話】『守る』というかたち
一気に顔が熱くなる。
ラビが身体を離し、にやにやしながら私を覗き込む。
「なに、期待した?」
「……っ」
【ちがう】
震える手で書きなぐった文字は、思いきり歪んだ。
「ふーん。じゃあなんで顔真っ赤なん?」
枕を掴む。
「悪ぃ悪ぃ。……可愛かったからさ、つい」
投げる前にラビが両手を上げた。
じっと睨んでから、その胸を拳でこつんと叩く。
離そうとした手を、ラビが捕まえた。胸元に残った私の手を、大きな手がゆっくり包む。
私は、手を引かなかった。
「……ラビ?」
さっきまで浮かんでいた悪戯っぽい笑みが消えていた。翠の瞳が、まっすぐ私を見ている。
一度だけ、その視線が唇へ落ちた。
「……いい?」
いつもの軽さは、どこにもなかった。
私は小さく頷く。
ラビの手が頬へ触れる。
耳の下を撫でた指が銀髪へ入り、後頭部をそっと包んだ。
近づくほど、呼吸の音まで近くなる。
吐息が唇を掠める。
目を閉じた。
柔らかく、唇が重なった。
ほんの短い口づけ。
一度離れて、すぐにまた触れる。
今度は少しだけ長く。
「……ん」
吐息が漏れた。
胸の奥が落ち着かなくて、私はラビの服を掴む。
指先の下から伝わる鼓動が、思っていたよりずっと速かった。
――ラビも。
そう思っただけで、胸の奥が甘く疼く。
唇が離れる。
近くに残っていた顔を見ていたら、今度は自分から触れていた。
ラビの息が止まった。
――あ。
今、自分から。
恥ずかしさに身を引くより早く、頬を包んでいた手が私を引き寄せる。
「ん……っ」
さっきより深く重なった口づけに、息が詰まる。
私はラビの肩へ腕を回した。
背中へ回った腕は、傷を避けるようにそっと身体を支えていた。
「……ラビ……」
口づけの隙間から、名前が零れる。
掠れた、まだ頼りない声。