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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第52章 【第四十七話】欲しかった言葉




その日の午後、リナリーが顔を出した。

「聞いた? 本部の移転先、正式に決まったんですって」


「……そうなの?」

「ええ。日取りはこれからだけど、兄さん、朝から書類に埋もれてたわ」

リナリーは肩をすくめて笑った。

「科学班なんて、荷造りって言いながら半分は発掘作業になってるし」


「……何それ」

思わず笑ってしまった。



帰り際、リナリーは扉の前で足を止めた。

「……ねえ。ちゃんと食べてる?」

「食べてるわ」

「そう? ならいいけど」

何かを言いかけたものの、リナリーは結局何も聞かなかった。


「じゃあ、また来るわね」

扉が閉まる。



……皆、気づいている。

気づいたうえで、聞かずにいてくれる。



その優しさが、今は少しだけ息苦しかった。





その夜も、ベッド脇の椅子は空いたままだった。

前の夜は、廊下を通る足音を数えた。



今夜はもう、数えなかった。

食事の膳も、少しずつ残すようになっていた。



廊下に人影が通るたび、赤い髪を探している自分に気づく。


探している自分に気づいて、目を逸らした。


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