第50章 【第四十五話】『守る』というかたち
私宛に面会の申し出があったと看護師さんから聞いたのは、朝の検温の時だった。
ファインダーの二名。
名前を聞いて、私はメモ帳を取り落としそうになった。
外出許可が出たら、ラビと二人で話をしに行くと決めていた。
私から行くはずだったのに。
「……今、こちらへ案内してもいい?」
看護師さんが、私の顔を見ながら訊いた。
断ることもできる訊き方だった。
私は頷く。
看護師さんが出て行く時には、リナリーはもう立ち上がっていた。
「私たち、ちょっと散歩してくるわね」
「ティファちゃん、気にしないでゆっくり話してちょうだいね」
ミランダはそう言って、穏やかに笑った。
二人とも、理由は聞かなかった。
静かになった病室で、メモ帳の同じ頁を開いては閉じる。
廊下に足音が近づき、扉の前で止まった。
少し間を置いて、声がする。
「……失礼します」
扉が開き、二人が入ってきた。
ヨハンと、あの日、歌を聞いて跪いたファインダーの一人――確か、パウルさんだ。
二人とも、まだ包帯の残る腕を袖の下に隠すようにして、ベッドから少し離れた場所に立った。
近づいてこない。
ベッドまでの数歩分が、そのまま、あの日の距離だった。
私は枕元のメモ帳を取り、膝の上に置く。
ペンを握る指が僅かに震えた。
何度も頭の中で繰り返してきた言葉だった。
なのに、最初の一文字を書くまでに時間がかかった。