第50章 【第四十五話】『守る』というかたち
「今回、本部に来てたオセアニア支部長……あの人、本物じゃなかったの」
ペンを持つ手が止まる。
「ノアだったの。ルルベルっていう」
ノア。
その一言で、身体の奥が冷えた。
「プラントの『卵』を奪い返すために、第五研究室を封鎖して、そこにいた科学班の人達を襲ったみたい」
リナリーは膝の上で手を組んだ。
「亡くなった人もいるし……スカルに変えられた人もいたって」
息が詰まる。
頭に浮かんだのは、タップだった。
黒い骨の身体。
崩れていく指。
最後までジョニーを見ていた、あの顔。
あの姿になった理由を、私は知らなかった。
どうして第五研究室があんなことになったのか。
どうしてタップが、あの姿になっていたのか。
今になって、ようやく繋がった。
私は目を伏せた。
何かを書こうとしたのに、言葉が浮かばなかった。
しばらくして、リナリーが果物とナイフを手に取る。
重くなった空気を少しだけ変えるように、静かな声で言った。
「さっき、皆の病室を回ってきたの。アレンくんの傷が一番酷かったから、まだしばらく安静にしてないといけないみたい」
それから、少しだけ笑った。
「ラビからね、『目、覚めたか』って。……今日だけで三回目よ」
私は顔を上げた。
どうやら、自分の怪我のことは一言も言わず、私の様子だけを聞いているらしい。
ボードへ書く。
【怪我は?】