第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
「タップ……タップ!」
何度名前を呼んでも、もう返事はない。
ジョニーの嗚咽が、壊れた研究室へ響いた。
それでも、ゆんは歌を止めなかった。
崩れた瓦礫の下から覗く、血のついた白衣。
持ち主を失った眼鏡。
床へ落ちたままの名札。
タップだけではない。
この場所には、まだ幾つもの気配が残っていた。
歌は、崩壊した研究室の隅々へ広がっていく。
倒れた者の傍へ。
仲間の声も届かない者の傍へ。
喉元の亀裂を通して、この場所へ留まっていた気配が、一つ、また一つとほどけていく。
行き先は見えない。
それでも、もう迷ってはいない気がした。
次の息を吸った瞬間、喉の奥がひどく軋んだ。
――あと、どのくらいもつだろう。
声はもう、次の一音さえ繋げられるか分からないほど震えていた。
――まだ、終われない。
歌は、生き残った者達の悲しみを消さない。
それでいい。
旅立つ魂が、一人きりにならないように。
消せない悲しみごと抱えて、最後まで傍にいたかった。
リーバーが、深く目を伏せる。
いつの間にか、リナリーも来ていた。
ジョニーの隣へ膝をつき、泣きながらその肩を抱いていた。