第49章 【第四十四話】灰に咲く白百合
二人分の力を受け、退魔ノ剣がレベル4の胴を貫く。
その勢いのまま、レベル4の身体を床へ縫い止めた。
肩口から胸元まで広がっていた亀裂が、一気に全身へ走る。
その奥から、白銀の光が噴き上がった。
「――ァァァァァァァァァァァッ!!!」
白い装甲が砕け、歪んだ羽が裂けていく。
それでも、レベル4は倒れなかった。
「いのせんす……」
ひび割れた顔が歪む。
「きらい」
「きらい、きらい、だいきらいいいっ!!」
白い腕が、胴を貫く剣を掴んだ。
癇癪を起こした子供のように暴れ、無理矢理引き抜こうとする。
「っ……!」
柄を押さえ込むアレンの腕が軋む。
レベル4の声へ重なるように、ティファの内側へ別の声が届いた。
――タスケテ。
――クルシイ。
イノセンスを憎む声と、救いを求める声。
同じ器の外側と内側から、二つの声が響いていた。
レベル4が生きている限り、あの魂は闇の底で泣き続ける。
ティファは床へ手をついた。
――立たなければ……っ。
もう一度、あの光を呼び戻そうと指先へ力を込める。けれど、腕は震えるばかりで身体は持ち上がらない。
喉元の紋章も、痛みに脈打つだけだった。
――お願い……っ。
――もう一度だけ、応えて……っ!
それでも、指の一本さえ動いてくれなかった。
「おい……っ」
耳元で、ラビの声が揺れた。身体を支える腕へ、咄嗟に力がこもる。
「はなせ……このぉぉッ!!」
レベル4の腕へ、さらに力が膨れ上がった。
――【脳傀儡】――カルテガルテ!
その動きが、突如止まる。
「……?」
振り上げかけた腕が宙で凍りつき、レベル4は自分の身体に置き去りにされたように動けなくなった。
ラビが息を呑む。
「――撤退は中止だ。コムイよ」