第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
私は静かに息を吸い、母から受け継いだ送りの歌を紡いだ。
最初の一音とともに、両手へ再び白銀の刃が形を結ぶ。
広場全体が、悲鳴のように震えた。白い影たちが、一斉に揺らぐ。
苦しみに濁っていた旋律が、私の歌へ引かれるように、わずかに形を取り戻していく。
それを拒むように、少女の身体へ絡みついていた黒い糸が、大きく脈打った。
「来るぞ!」
ラビが叫ぶ。
霧が一斉に持ち上がった。
地面に這っていた黒い影が、無数の腕のように形を変え、こちらへ伸びてくる。
「ティファ嬢、歌を止めるな!」
ブックマンの腕が鋭く振るわれた。
同時に、放たれた複数の黒い針が、私と少女の周囲へ深く突き立つ。
針の間を淡い光が走り、一時的な囲いとなって、押し寄せる霧を食い止めた。
「死者の魂が、この歪みを支えておる!」
ブックマンが叫ぶ。
「送れるものから送れ! 縛りが弱まれば、核が露わになる!」
……でも、あの子が。
少女の輪郭が、霧に揺らいでいる。
母親の魂を縛る黒い糸が、少女へまで伸びていた。母を求める声も、親子の記憶も、何かが繋ぎ目として利用している。
「少女も巻き込まれておる! 死者との繋がりを断たねば、生きた者まで消失へ引きずられるぞ!」
意味を理解した瞬間、背筋が凍った。