第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
ラビはしばらく私を見ていた。それから、ふっと口角を上げる。
「ティファって、結構怖いこと言うんだな」
「そう?」
「出会って数日でそこまで見られると、オレの立場がねぇさ」
軽い声の奥で、何かが小さく軋んだ。
私は視線を窓の外へ戻す。
「あなたの笑顔、ときどき奥が見えないのよ」
「……オレ、もしかして警戒されてる?」
「そうかもしれないわね」
正直に答えると、ラビは数秒黙った。
やがて、肩を竦める気配がする。
「そりゃ残念。……なぁ、どうやったら好感度上がるんさ? こっそり教えてくんね?」
思わず、ほんの少しだけ口元が緩んだ。
隣で、ラビがこちらを見る。
その目に浮かんだのは、探る色ではなく、わずかな驚きだった。
「……笑うと、やっぱ可愛いな」
「軽い言葉で誤魔化さないで」
「本心なのに」
ラビが笑う。その声に、もう軋む音は混じっていなかった。
私は窓の外へ視線を落とす。
遠ざかっていく街並みの向こうに、インドの乾いた空と、アレンの白い髪が浮かぶ。
――必ず、追いつきます。
あの声へ恥じないように。
膝の上で手を握り締めると、手首のボタンが、髪紐の銀細工に触れて小さく鳴った。