第42章 【第三十七話】声なき再会
ふと、視界の端で、チャオジーが目に入った。
漫才には加わらず、じっとアレンの横顔を見ている。
何かを持て余すような目だった。
――方舟での、あの一幕。
(……ま、無理もねぇさ)
こういうのは、時間が要る。
神田とアレンの応酬はまだ続いている。
ラビは呆れた。
けれど――
こういうやり取りが戻ってきたこと自体は、悪くない気分だった。
――ただ、その輪の中に、足りないものがある。
いつもなら、この馬鹿げた応酬に呆れて、それでも笑ってくれる誰かが。
ラビは、来た道の方を、ちらりと振り返った。
まだ、眠っているだろうか。
早く、目を覚ませばいい。
そう思いながら、ラビは足を前へ戻した。
*
「それより、外に出られねェのかよ、モヤシ!」
「アレンですってば、このヤロゥ!」
「喧嘩すんなよ、もー……」
ラビが割って入る間にも、アレンは扉へ手を掛けていた。
「出られるか、今確かめま――」
扉が、開く。
「――すよっ?」
その先に、床はなかった。
真っ暗な、底の見えない穴。
アレンの身体が、前のめりに傾ぐ。
「わ――っ! アレン、下ぁっ!!」
「うわっ!」
咄嗟に、アレンが神田の団服の裾を掴んだ。
「なっ……! このっ……!」
引きずられかけた神田が、ラビのシャツの裾を掴む。
「んげっ! わぁぁあっ、巻き添えかよっっ!」
三人分の体重が、扉の縁でぶら下がった。
「ふんっ!」
「ご、ごめんチャオジー……!」
「今、引き上げるッス!」
最後尾のチャオジーが、ラビの足を掴んで、歯を食いしばる。
「急いで……マジ意識が……っっ!!」
「……外には、つながってないみたいですね」
「テメェモヤシッ! 落ちるならひとりで落ちろ!!」
「く、首……締まってるっ……」
その時だった。
「!? 何だ……」
チャオジーの手首で、何かが光った。
鈍い金属音とともに、腕輪が、独りでに装着される。
白い光が、チャオジーの腕へ漲った。
三人分の体重が、嘘みたいに引き上げられていった。