第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り
「ラビ、ティファの任務は兄さんが決めるんだから、勝手に相棒を名乗らないの」
「希望くらい出してもいいだろ?」
「その希望が不純なのよ」
「美人と任務に行きたいのは、健全な希望さ」
軽口を叩きながら笑うラビ。
「随分、浮かれてんな」
低い声が、区画の入口から落ちた。
笑い声の残っていた空気が、一瞬で冷える。
視線を向けると、神田が立っていた。
長い黒髪を背へ流し、腰には刀を提げている。
その姿からは、近寄りがたいほど張り詰めた気配が漂っていた。
神田の暗い瞳が、新しい団服を纏った私へ向いた。
正確には、整えられた黒い布地と、まだ汚れ一つない銀の装飾へ。
「……服なんざ、すぐ血で汚れる」
リナリーの笑みが僅かに曇った。
「神田、そんな言い方……」
「事実だろ」
神田はそれだけ言うと、私へ視線を据える。
「着たからには、死ぬな」
刺すような言葉だった。
けれど、不思議と腹は立たなかった。
綺麗な団服へ水を差したいのではない。
これを纏って戦場へ立つなら、浮かれるな。
生きて帰る覚悟を持て。
そう突きつけているように感じた。