第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「現地から届いた報告書も、妙なんだよ。最初の報告には、村人が三百人ほど暮らしていると記されていた。けど、翌日の追記では、村の人口欄が空白になっている」
「空白……」
「問い合わせたらね、担当のファインダー本人が、そこに何を書くはずだったのか思い出せないと言うんだ」
指先が、わずかに冷たくなる。
コムイさんは、別の紙を差し出した。
そこには、震えた文字で短い文章が綴られている。
――村は存在している。
――だが、そこに誰がいたのか分からない。
――鐘の音を聞くな。
――こちらへ来るな。
最後の一行だけが、紙を破りそうなほど強く書き込まれていた。
「報告を送ったファインダーも、その後消息を絶った」
部屋の空気が、重く沈んだ。
喉の奥で、ニルヴァーナが微かに熱を持った気がした。
まだ何も聞いていない。
歌も、魂の悲鳴も。
それなのに、紙の向こう側から何かが指を伸ばしてくるような、薄い不快感が残った。
「……鐘、というのは」
「分からない。報告にあったのは、それだけなんだ」
コムイさんは、真っ直ぐ私を見た。
「この数日で聞かせてもらった話だと、君の歌は魂へ届くんだったね。今回の異変が本当に魂に関わるものなら、君にしか確認できないことがあるかもしれない」
『君にしか』
左胸の紋章が、急に重くなった気がした。
私は羊皮紙へ視線を落とした。
「……承知しました」
小さく息を吐く。
「行ってきます」
コムイさんの目が、ほんのわずかに和らいだ。