第42章 【第三十七話】声なき再会
もし、扉を開けて。
触れて。
そこにある温もりまで、消えていたら――
「おい」
神田の声が、思考を断ち切った。
気づけば、白い部屋の前まで来ていた。
「行かねぇのか」
「……行くさ」
ラビは、笑ってみせた。
上手く笑えたかは、分からない。
「行くに決まってんだろ」
乱れた息を、無理やり飲み込む。
深呼吸、ひとつ。
顔を、いつもの顔に戻す。
泣きそうな面で会いに行ったら、あいつが心配するから。
「……よし」
そして、片手を上げながら、扉をくぐった。
*
「――よぉ」
軽い声。
片手を上げる仕草も、いつも通り。
ラビだった。
その後ろからチャオジーが続き、さらに神田が現れる。
神田の肩には、意識を失ったクロウリーが担がれていた。
「ラビ……みんな……!」
アレンの肩から、ふっと力が抜ける。
リナリーも、目を潤ませたまま、言葉にならない様子で彼らを見つめていた。
チャオジーが大きく息を吐く。
「はぁ……よかった……本当に……」
その横で、神田は無言のまま、担いでいたクロウリーを床へ横たえた。
乱暴に見えて、頭だけは最後まで支えていた。
クロウリーは目を覚まさない。
ただ、浅い呼吸だけが、まだ生きていることを知らせていた。
部屋の空気が、ほんの少しだけ緩む。
けれど。
ラビの視線が、奥のソファで止まった。
そこに、ティファが横たわっていた。
白い顔。
閉じた瞼。
喉元に巻かれた布。
ラビは、すぐには動けなかった。
ついさっき、この腕の中にあった温もり。
落ちる直前、アレンへ押し出した軽い身体。
離れていく感触。
全部が、嫌になるほど鮮明に蘇る。
「……ラビ」
アレンが、静かに声をかけた。
「呼吸は、ちゃんとあります」
その言葉で、ようやく足が動いた。