第42章 【第三十七話】声なき再会
クロスは、こともなげに言った。
煙を吐きながら、崩れゆく球体を見据える。
「方舟を起動させて、この転送を止めれば――『卵』は新しい方舟に届かない」
「元帥……何か知ってるんですか?」
リナリーが問う。
「こんな得体の知れない舟を、どうやって……方舟を動かせる方法を……?」
クロスは、答えなかった。
ただ、ゆっくりとアレンを見た。
眼鏡の奥の目が、細くなる。
「お前がやるんだ、アレン」
「――!!?」
思考が、止まった。
僕が?
この方舟を?
問い返す間もなく、クロスは崩れゆく『卵』へ向き直っていた。
印を結ぶ。
「――唵(オン)」
指先に、光の梵字が連なっていく。
「阿(a)・吽(u)・末(m)……効けよ……!」
「縛(バル)!!」
放たれた術式が、『卵』を鎖のように取り巻いた。
剥がれ落ちる速度が、僅かに、鈍る。
「術で転送を邪魔して、若干だが進行を遅らせる……」
クロスの額に、珍しく汗が滲んでいた。
「急げ。もう消滅の時間だ。お前が舟を動かせ、アレン!」
「は?」
「待って下さい、何言ってるか全然分かりません師匠!!」
「とっておきの部屋を開ける。ティムに従え」
「そうすりゃ分かる」
「どうして僕が……っ」
言い終わるより早く。
ティムキャンピーが、翼を広げた。
白色の光が、アレンの視界を塗り潰した。