第2章 【第一話】雪に残る歌
どれほどその場に座り込んでいたのだろう。
雪は降り続け、私の髪や肩にも、母の灰にも容赦なく積もっていった。寒いはずなのに何も感じなかった。私は母の髪紐を胸へ抱き締めたまま、声も出せずに蹲っていた。
やがて背後で雪を踏む音がした。一歩、また一歩。迷いなくこちらへ近付いてくる。
「随分と派手にやったもんだな」
低い声が落ちた。
顔を上げると、白い景色の中に赤が見えた。
男の髪だった。
長い外套を揺らし、ひどく不機嫌そうな眼差しで辺りを見回している。
男の視線が、まだ淡く光る雪の上をなぞった。黒い灰。砕けた異形の痕跡。そして、私の喉元へ微かに残る白銀の輝き。
その瞳が鋭く細められる。
「この辺りでAKUMAの気配を拾ったんだが」
男は小さく舌打ちした。
「ガキ一人でぶっ壊しやがったのか」
「誰?」
言葉の意味がわからず、私は母の髪紐を握り締めたまま掠れた声を絞り出す。
男は私の顔を見たまま、ぴたりと動きを止める。鋭かった瞳がわずかに見開かれる。
その視線が、私の髪から手の中の髪紐へ移る。それから雪の上の灰と私の間を、ゆっくり行き来した。
「……まさか」
先ほどまでの苛立った声音とは、わずかに違っていた。男は雪の上の灰を見つめ、苦々しそうに眉を寄せる。
「あいつの娘か」