第6章 練習の成果
入り口の前まで来て、ふと足が止まる。全然関係ないのに入っていけるか?用事聞かれたらなんて答える?偶然通りかかった感出してく?いやぁ、でもさだって俺、人見知りよ?
ひとり作戦会議してると後ろから名前を呼ばれた。
「北斗さん?」
「うぉぉっ!」
「びっくりさせちゃってごめんなさい!!」
「あ、いや。こんなところで立ち止まっててすみません」
あれ?今、北斗さんって呼ばれた?
「休憩中ですか?」
「あ、そう…です」
会いたくて来たとは言えなくて言葉に詰まった。
「どうしてここに?」
「えっと…たまたまです」
「そうなんですね、でもお会いできて嬉しいです」
「俺も…さんと会えて嬉しいです」
呼べた。呼べました。しかも会えて嬉しいまで言いました。どなたか俺の勇気ある行動を褒めてください。
「それなら良かったです!あ、そろそろ戻らないとなので…またゆっくりお話しましょ?それでは失礼します」
「あ、ありがとうございました!」
前と同じく、にこっと笑って小さく手を振ってくれた。仕事に戻る後ろ姿を見送って俺もメイクルームに戻った。
「おかえりなさい。その顔は会えましたね?」
「おかげ様で会えました。お世話になりました」
「どういたしまして」
もちろんその後の撮影はめちゃくちゃ気合い入ってたのは言うまでもない。