第5章 名前呼びへの第一歩
『松村さんも下の名前で呼んでください!私も北斗さんって呼んでもいいですか?』
『というかもう呼んじゃいましたね、すみません』
俺、下の名前、北斗だよな。
昔、旅人があの星を目印にして方角を見つけてこうきちんと進んでいたことが由来の北斗という名前。
この前まで松村さんだった。“北斗さん”
どう返信する?嫌じゃないって伝えたい。
『すみませんじゃないです。呼ばせたみたいなものですし』
『俺もさんって呼んでもいいですか?』
送ってしまった。終わった、今度こそ終わった。
『もちろんです。次お会いしたら北斗さんって呼びますね』
トーク画面を閉じる。開く。
また閉じてやっぱり開く。
“北斗さん”
やば。文字だけでこんなに舞い上がるのに呼ばれたら俺おかしくなりそう。
『俺もさんって呼びます』
『待ってますね』
「…さん。さん」
宣言したけど呼べる自信ありません。次会えるまで練習します。