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彼女はボクに発情しない

第5章 保健室のブルース


「おお、そのまま、そのまま」
私が支えていると、飯長先生が陽太の頭に手際よく包帯を巻いてくれる。これでやっと陽太を横にすることができる。そっと、陽太を布団に横たえた。その様子を見て、飯長先生は一言「よし」と言うと、自分も職員室に行くから様子を見ていてほしいと私に言い残して出ていった。

こうして、保健室には私と横たわったようただけが残された。

胸が少し上下している。良かった・・・、ちゃんと息をしている。額が少し汗ばんでいるような気がしたので、ハンカチを取り出して少し拭ってやる。

なんであんなふうにひっくり返ったのか想像もつかないが、心配させないで欲しい。貴方にもしものことがあったら、私はどうしたら良いの?

さっきの音を思い出してブルッと身震いをした。血が出ていると言われたときには、背筋が寒くなった。でも、こうしてきちんと手当されて、寝かされている様子を見ると、大丈夫そうだと、安心できた。

陽太の顔を眺めているうちに、陽太がひっくり返った後の教室での大騒ぎを思い出した。
みんなが陽太を心配していた。みんなが陽太を保健室に運びたがった。

陽太はすごい。みんなの人気者だ。

朝、霧島くんからカラオケに誘われていたときの会話。実は私にも聞こえていた。

『お前はいいかもしれないけどなあ。でも、俺らにとっては・・・なあ・・・』
『あたしらなんかと遊んでくれるかな?』
『なんか、近づきがたいっていうか・・・。』

昔からそうだ。PIHのせいで、私は人とうまく付き合えない。いつ『発情』するかわからないから、一緒に遊びに行くこともできない。

いつしか、人から距離を取るようになっていた。

別に、お高く止まっているつもりはない。避けているわけではない。
ただ、怖いのだ。

そんな私を、周囲の人は『近づきがたい』と思っているのだろう。
そんな私を陽太は一生懸命誘ってくれる。人の輪に入れようとしてくれる。

私がいなければ、もっともっと、陽太は色んな人と仲良くできるはずなのに。私がいなければ、もっともっと普通のかわいい子とお付き合いだってできるはずなのに・・・。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
陽太・・・。
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