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彼女はボクに発情しない

第5章 保健室のブルース


もう少しだけ。学校を卒業したら、そうしたら、あなたを自由にするから。だから、それまで、もうちょっとだけ・・・。

「私を守って・・・陽太・・・」

ギュッと布団の下で陽太の手を握りしめた。

「うーん・・・」
陽太のまぶたがピクピクと動く。そして、ゆっくりと目が開いた。
良かった・・・気がついたみたいだ。

ゆっくりと身体を起こそうとするが、打ったところが痛むのか、うっとうめいて頭を押さえた。

「目が覚めた?」
声をかけると、びっくりしたようにこっちを見た。自分がどうなったのかわからないのかもしれない。

「・・・・・・」

言いながら顔をしかめる。少し視線を彷徨わせている。やっぱり痛いの?
「大丈夫?」
なおも尋ねるが、陽太は不審そうに私を見るばかり。
あ、そうか・・・なんで私が居るのかってことよね・・・そうよね・・・。だって、保健委員でもないしね。

「あ・・・先生から、保健室に連れていけと言われて・・・」
ほぼ嘘だ。私が行きたくて来たのだが、そう言えなかった。すがりついてくる重い女と思われたくなかった。
陽太は一応納得してくれたのか、「そうか」と言ってくれる。
私は極力平静を装う。事務的に、先生に言われたから来た、という風に見せなくては。

「で?頭大丈夫?」
あああ!!
なんて言い方!間違えた・・・
頭痛くない?とか、具合悪くない?でも良かったはずなのに!

『頭大丈夫か?』はお前の方だ!
心のなかで盛大にツッコミを入れる。陽太も若干気に触ったのか、やや引き気味に「少し痛むけど、まあ」と応えた。

気まずい・・・。

私は「そ」とだけ言うのが精一杯だった。
顔を伏せる。陽太はみんなに心配されて、みんなに愛されている。
それに引き換え、私は・・・。

『近づきがたい』
『私らなんかと遊んでくれるかな』

誰も寄せ付けず、誰にも心配されず・・・。陽太にすがりついて生きている。
こんな自分が本当に恥ずかしくて、いたたまれない。
「じゃあ、行くから」

本当はもっと二人でいたかったし、昨日のお礼もまだ言えてない。でも、でも、とてもじゃないけど、この空気に耐えられなかった。

気がつくと、私は飛び出すように保健室を後にしていた。
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