第9章 十六夜★
「八戒の気持ちは嬉しい…だけど…今日八戒を見てて思ったの。きっと八戒は子どもが好きなんだなーって…」
この後何を言うかピンときた八戒は、華楠をぎゅっと抱きしめる。
「もういい」
しかし華楠は続ける
「…八戒はきっといいお父さんになるよ。
でも私は八戒の子ども産んであげられないから……」
「私じゃダメなんだよ…もっと相応しい人いるから…っっ」
そこで華楠の言葉が詰まる。
(そんなこと言わせたいわけじゃない)
八戒は抱きしめた腕を解き向かい合うとそのまま華楠の両手と重ねた。
「ダメなんかじゃ、ないです」
それは、八戒が過去を打ち明けた時に華楠が言った言葉
「ダメって言わなくて…良いんですよ」
重ねた両手を強く握り締める
「僕は…次に一緒になるなら、殺しても死ななさそうな女性って決めてたんです」
「………?」
「大家族のために僕が汗水垂らして働いても、休みの日にはお父さん邪魔よ!って家追い出されて」
「年頃の可愛い娘が悟浄オジサンの毒牙にかかるのが唯一の不安で」
「………ふふ」
「………そんな風に思えるようになったんですよ」
「…八戒…」
「華楠、子が望めなくても守り育てることはできます。僕は貴女が良い。貴女が傍に居てくれさえすれば…」
「え、殺しても死ななさそうなの?私…」
「……違いますか?」
「違わなくは…ない…かな……んっっ…!」
八戒は華楠の頭を引き寄せ唇に吸い付く。
「拒むなら今ですよ」
柔らかな唇同士が触れる。
(拒めないよ…)
華楠は、一途の擬人化と揶揄される八戒がこんなに真っ直ぐ想いを伝えてくれたことが純粋に嬉しかった。