第45章 誕生日
***
3年寮へ着くと、そのまま中へ入る。
静かな廊下を進み、迷うことなくユカリの部屋へ向かった。
扉の前で足を止める。
軽くノックをしてから、爆豪は静かに扉を開けた。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、薄暗かった室内を淡く照らしている。
部屋の中は静かだった。
ベッドへ視線を向ければ、布団にくるまったユカリが、まだ眠っている。
規則正しい寝息。
普段の穏やかな表情よりもさらに無防備なその寝顔に、爆豪は一瞬だけ足を止めた。
それからベッドの縁へ腰を下ろす。
しばらく黙って寝顔を眺めたあと、そっと手を伸ばした。
指先で、頬を撫でる。
柔らかな肌をゆっくりと滑った指が、ほんの少しだけ髪に触れた。
「ん…………」
小さく身じろぎして、ユカリの睫毛が震える。
やがてゆっくりと瞼が開いた。
まだ眠気の残る瞳が、ぼんやりと目の前を捉える。
「…………」
ぱち、ぱち。
何度か瞬きをしたあと――そこにいる人物を認識した瞬間、目が丸くなった。
「…………」
「起きたか」
「…………」
ユカリは何も言わない。
ただ、目の前に座っている爆豪をじっと見つめている。
「……ンだよ」
少し訝しげに眉を寄せる。
すると。
「……………ふふっ」
ユカリの口元が、ふっと緩んだ。
「ううん」
驚きはほんの一瞬だった。
次の瞬間には、嬉しそうに頬を緩ませている。
「おはよ」
「…………はよ」
短い返事。
けれど、その声にはいつもより少しだけ柔らかさがあった。
ユカリはまだ眠そうに目を細めながら、もう一度爆豪の顔を見る。
そして、ふと思い出したように口元を尖らせた。
「………ねぇ」
「あ?」
「寝顔見たでしょ」
「見た」
「もー……」
恥ずかしそうに布団を少しだけ引き上げる。
そんな仕草を見て、爆豪は鼻で笑った。
「寝てても可愛かったわクソが」
「…………」
思いがけない一言に、ユカリの動きが止まる。
ほんのりと頬が赤くなっていく。
「……朝から、そういうこと言う?」
「事実だろ」
「……もう」
困ったように笑いながら、ユカリはゆっくりと上体を起こした。